心には形がありません。
心が動くとは「感じる」ということです。すなわち「感動」です。

幸せの青い鳥を探しに旅に出かけたチルチルとミチルが、
いくら探しても青い鳥を見つけられず落胆して家に帰ったら、
結局自分の家の中の鳥籠にいるのを見て感動した
という「チルチルミチルの青い鳥」の話があります。
幸せは遠くにあるのではなく、自分たちの最も手近なところにあるという話ですが、
「幸福」は“求める”“探す”ものではなく
自分の心の中に“感じる”ものだと思います。

必死に祈って彫った木片は、
やがて人は仏像として感じ感謝の念で手を合わせて祈ることがあります。
しかし、高いお金で買ってきた仏像は、初めこそ祈っても、
やがて忘れてタタミの上に転がっているかもしれません。
その違いは“熱き心の祈り”です。
その祈りは自然に真の行動として現れるものです。

昔、家を造る時の祈りがとんでもない大きな力に変わる
という経験をしたことがあります。
私が、とある家の設計をその家の旦那様と
必死になって提案プランを毎晩遅くまで何度も検討していた時でした。
その家の奥様とお母様から
「お金がそんなにないのに、いつまでグズグズしているのか」と
罵声が飛んできたのです。
実は、その旦那様は婿養子として奥様の家系に入ったこともあり、
立場的に弱く、長く抑圧された状況でした。
しかし、それを聞いたお子さんが、母と祖母の二人に向かって
「父さんが必死になって頑張っているのを邪魔するな!」と反論したのです。
それからはお子さんが味方に付いて、旦那様の父親としての復権が叶ったそうです。

家づくりとは実は家族が「幸せ」を感じる最高の舞台です。
建築主の熱き心の祈りはやがて工事に携わる多くの人たちに連鎖的に伝わり、
職人ならば誰もが持っている職人魂が突き動かされます

そんな建築主の意思の沁み込んだ住宅は、
当然感謝の念があふれる家族の豊かな住生活に直結していきます
もし予算が少ないからといって、心の祈りの力を忘れてしまっては、
単なる生活するだけの「容器」になってしまいます。
これほどもったいない話はありません。

まずは、“考え”“想い”“祈る”こと、
これが豊かな住生活への第一歩なのです。